特別養子縁組の対象年齢が15歳未満に拡大される効果

2020年4月21日

法務大臣の諮問機関である法制審議会は今年、特別養子縁組の対象年齢を現行の原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げる見直し案をまとめました。なぜ年齢を15歳未満としたのかの根拠は、日本では15歳になれば、親(法定代理人)の許可なく、主に次のことが認められるからと考えられます。

  • 遺言書を書くことができる
  • 氏(姓)の変更の申立てが出来る
  • 会社が設立できる(印鑑登録ができるから)
  • 普通養子縁組ができる(離縁の訴えも提起できる)

今回の改正案では、特に「普通養子縁組」ができる年齢を基準として、そのラインの線引きをしたと考えられます。つまり、15歳になれば、自分の意思で(普通)養子縁組ができるのだから、大人だけで決定される特別養子縁組は、15歳以下が適当だと判断されたのだと思います。

この改正案は概ね評価されていますが、対象が15歳までとなれば、幼い年齢のうちに縁組が成立しないことになる懸念もあるようです。確かに制度が改正されることで、特別養子縁組の対象となる子の養育開始の年齢が、小学生や中学生ということが現実となります。家族としての再構築をするためには、幼いほど良いとされるのは事実です。しかし、これまでは法律で不可能だったことに、新たな可能性が生れるのです。不可能が可能になれば、あとは運用の問題で適正な措置が講じられる可能性が生れます。選択肢も広がります。これは、大いに喜ぶべきことだと思います。子どもの歩む道が拡充されることになるのは、間違いないですから。

また、現状では、特別養子縁組が成立する可能性のある子だったとしても、実親の同意が得られないまま6歳を過ぎれば(6歳に達する前から事実上養育されていれば8歳まで)、特別養子縁組の道が閉ざされてしまいます。しかし改正されれば、15歳まで機会が伸びる(可能性が続く)ことになります。これは子の利益に他なりません。また、委託を受ける里親としても、6歳(もしくは8歳)というリミットに怯える日々から解放されることになります。そして何より、私が改正の最大の利点と考えるのは、子の意思が反映されるだけの年齢が設定されたことです。特別養子縁組は、法律上も実の親との関係が断絶されるという、極めて重大な決定です。現行の6歳まで(場合により8歳まで)なら、児童が自分で明確に意思表示することは難しい年齢と言えます。しかし、10歳や15歳なら、自分の気持ちが伝えられる年齢だと思います。自分の意思表示ができるという意味は、極めて大きいと思います。

また、現在の生殖医療技術においては、両親と子の年齢差は45歳程度までとするのが一般的とされています。つまり、現在の制度では事実上、養親は51歳になれば、特別養子縁組が望めないということになります。しかし法改正があれば、15歳の子どもなら養親は60歳であっても、自然な親子関係であると認められて養子縁組が成立する余地が生じます。もちろん、60歳の養親が15歳の里子を実子として養育しはじめることに、社会的妥当性は考慮されるべきですが、その余地が生まれること、いわゆる「縁」の結びつきの幅が広がることは、やはり大いに喜ぶべきことであり、歓迎されるべき法改正なのだと思います。

対象年齢が15歳までに拡大されることで、特別養子縁組を望みながら、まずは養育里親から始めようと思う里親も増えると思います。私も、その一人です。私たち里親にとって、この法改正を心待ちにしている人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。