養護施設を見学して
里親登録のための研修では、施設での実習がありました。そのとき初めて児童養護施設を訪問したのですが、抱いていたイメージとはまるで違いました。薄暗いコンクリート造りの建物の大部屋に、子どもたちが暮らしているイメージだったのですが、実際は、とても明るい建物に、5~6人程度の少人数制の空間(ユニット)があって、基本はその単位で生活をしています。部屋は1人もしくは2人部屋です。ユニット毎にキッチンやお風呂、トイレがあります。特に驚いたのは、キッチンが対面式だったこと。職員が食事を作る時に、児童の様子を見ながら調理できることが目的だそうです。これって、まさに家庭における理想形ですよね。つまり、食堂で一斉に食事をとっているのではないのです。基本は担当の職員がユニット毎に配膳して、同じテーブルで食べます。少し兄弟の多い家族のようです。もちろん、栄養士が献立を考えますから、バランスもバッチリ。また、TVゲームをしている子もいます。携帯を持っている高校生もいます。塾にも通って希望する学校を目指すことができます。私学にだって通えます。
ここで自分に対する疑問が湧くのです。施設よりも家庭での養育がベストなんて、本当に言えるのか?ということです。施設の食事はプロが栄養のバランスを考えています。食事、入浴、勉強、TVゲーム、就寝、起床の時間も規則正しいです。授業料が高い私立高校にも頑張って勉強して合格すれば通えます。慈善団体や企業からプロ野球やJリーグ、演劇の招待もあります。クリスマスのは山ほどケーキの寄付があります。キャンプやハイキングなどもあります。一方、一般家庭を見た場合、これらが親の仕事の関係から、教育の方針から、時間的、経済的理由から、できないことも多いのではないでしょうか。
「施設=悪」だなんて、とても言えません。それ以上のものが家庭なら子どもに与えられるといえば、エゴになります。
それでも私たち里親は、家庭での養育を目指すのです。その理由は、家庭でなければ享受できない家族の温かさがあると信じているから。それがなければ、施設で暮らす方が良い場合もあるはずです。お金の有無ではないと思います。お金持ちでなくても貧乏ながら施設より家庭の良さは、きっとあるはずです。里親には、一生をかけて育てる気概がなければ、養育を受け入れることで、その子にとって環境の低下になりかねないことを、自覚する必要があると思います。
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